フードバリアフリー広がる ハラル食やビーガンに対応

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フードバリアフリー広がる ハラル食やビーガンに対応

日本経済新聞

企業や飲食店、自治体などが菜食主義者(ベジタリアン)やイスラム教徒(ムスリム)らが安心して口にできる食事への対応を強化している。契機となっているのが、インバウンド(訪日外国人)急増と2020年東京五輪・パラリンピックだ。高齢者を含めて誰もが安心して食事を選び、楽しめる「フードバリアフリー」の環境づくりが広がっている。

飲食店関係者は日本フードバリアフリー協会の研修でハラル弁当を試食した(9月、東京・渋谷)

9月26日、東京・渋谷のモスクに飲食店関係者ら約10人が集まった。モスク内を見学後、日本フードバリアフリー協会(東京・港)のハラル研修に参加し、豚肉などを使わないムスリム向けの弁当を実食した。「意外と普段の味と変わらない」「日本人もおいしく食べられるなら、ハラル食に取り組みやすい」などの声があがった。

同協会の田中章雄代表理事は日本の飲食メニューの名称が曖昧だと訴える。その代表例が「幕の内弁当」だという。

飲食店でも調理法や食材を表記する店舗は少ない。同協会は外国人や子供にも分かりやすいピクトグラム(絵文字)での表記を推奨する。田中氏は「食材などを詳しく正確に表記すれば、本来食べられるものが食べられなかったという事態を避けられる」と指摘する。

千葉市では市が旗振り役になって、ハラル対応を進めてきた。県内の自治体や企業でつくる成田空港活用協議会は9月27日、動物由来の食品を一切口にしない完全菜食主義者(ビーガン)やハラル料理の試食会を開いた。大豆由来の人工肉「大豆ミート」を使ったカレーなど計7種の料理が並び、メニューや商品開発に生かそうと、ホテルの料理人や食品メーカーの担当者らが味わった。

東京都も五輪に向け、食の多様化への対応を急ぐ。ハラル対応の飲食店などをまとめたハンドブックを発行し、ラグビーのワールドカップ(W杯)のファンゾーンで配布した。都の担当者は「今年度中にベジタリアン用のハンドブックも作り、五輪開催時には配布したい」とする。



千葉市内のホテルではハラルやビーガンに対応した料理の試食会が開かれた(9月)

横浜駅西口の商業施設などで構成する一般社団法人、横浜西口エリアマネジメント(横浜市)は横浜駅周辺の店舗で、人工知能(AI)を使って飲食店のメニューを説明するサービスの導入を順次拡大する。例えばビーガンであることを専用サイトで打ち込むと、食べられるメニューが表示される仕組みだ。

企業にも食のバリアフリー化を進める動きが広がる。崎陽軒(横浜市)はビーガン向けに大豆ミートを使ったシウマイの弁当の受注販売を開始。きな粉などを製造するみたけ食品工業(埼玉県戸田市)はアレルギーの原因となるたんぱく質の一種「グルテン」を使わない米粉製品を開発した。

フードバリアフリーの考え方は、かむ力や飲み込む力が弱くなった高齢者にも当てはまる。介護事業を手がけるユニマットリタイアメント・コミュニティ(東京・港)は4月から始めた高齢者向けの食事宅配サービスで、そしゃくする力が弱い人向けの弁当を販売している。見た目や素材の風味に配慮しつつ、柔らかくして食べやすい料理が入っている。

食事の制限は個人差が大きい。特定の宗教や主義、そしゃく力、アレルギーなど理由は様々だが、そうした人が食事を選べる環境を整えることが重要だ。それが多様な社会にもつながってくる。

(山上ひかる)


■フードバリアフリー ベジタリアンやビーガン、ムスリムなど食事に制限がある人向けの料理を提供したり、食材や加工方法をわかりやすく表示したりする動きが広がっている。食物アレルギーや生活習慣病といった健康上の理由で食べられないものがある人への配慮も求められる。
 対応には食材だけでなく調味料にも配慮し、ハラル食専用の調理器具を新調しなければならないケースもある。2020年度に完全施行される食品表示法では、アレルギー物質などの食品表示ルールが厳しくなる。



この記事は、日本経済新聞に掲載された記事(2019年10月4日)を著作権者の許諾を得て転載したものです。

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