オリパラに学び、もてなす大学生 国際交流も深まる

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オリパラに学び、もてなす大学生 国際交流も深まる

日本経済新聞
津田塾大学の梅五輪プロジェクトのメンバー(東京都渋谷区)

近代五輪の父、クーベルタン男爵はオリンピックを通じて健全な若者を育て、相互理解や平和を実現しようとした。世界中から人々が訪れ、クリアすべき様々な問題も伴う五輪・パラリンピックの開催は、次代を担う大学生にとっても貴重な学びの機会といえる。日本文化の発信や海外チームをもてなす経験は、2020年東京大会のレガシーとなるはずだ。

■津田塾大、英語生かし課題を解決

メイン会場の新国立競技場、卓球が行われる東京体育館への「玄関」となるJR千駄ケ谷駅。改札手前で外国人観光客が足を止めた。視線を向けたのは、駅周辺や会場が英語で記された「SENDAGAYA MAP」。制作したのは、駅前にキャンパスが広がる津田塾大の学生たちだ。

「こんな近くで五輪が行われる。何か関われることはないか、ということで学内でアイデアを出しあった」と語るのは「梅五輪プロジェクト」学生代表の増野晶子さん(20)。17年4月に開設された総合政策学部の1期生を中心に、現在は160人の学生が同プロジェクトに参加する。大学が力を入れる英語とデータサイエンスを生かし、16のテーマが進行中だ。

プロジェクトは2つの「志」を持っている。オリパラ開催で生じる課題解決への貢献と、日本の魅力発信だ。「現代社会の課題解決力を養う」という学部の教育方針にもぴったりのフィールドワークといえる。



津田塾大学の梅五輪プロジェクトで作った千駄ケ谷駅周辺の英語マップを見る訪日外国人(東京都渋谷区)

千駄ケ谷駅の英語マップもその一つ。これまで通勤通学の人ばかりだった街に外国人の姿が目立つようになった。「実際にどんな問題があるのか、商店街や駅を聞き取りして回った。その中で出てきたのが『英語』だった」と増野さん。将棋会館からは英語で説明が難しいと聞き、ルール解説の英語版パンフレットを制作した。アイスクリーム屋の英語メニューも作った。

スマートフォンの利用や飲食など電車内のマナーを説明した外国人向けパンフでは、美術館の協力を得て浮世絵をモチーフに使用した。担当した滝まりなさん(21)は「海外の方たちの関心を引くにはどうしたらいいか、知恵を絞った」と話す。他にはSNS(交流サイト)上で落とし物を探す人と拾った人をマッチングさせる、自動応答システム(チャットボット)の開発にも挑戦中だ。



商品開発した伝統工芸グッズや、訪日客向けに作った英語パンフレット類

来夏は今以上に千駄ケ谷周辺を訪れる人が増えるだろう。オリパラ期間中、津田塾大ではキャンパス内で日本文化を体験できるイベントを企画している。

「東京の外にも盛り上がりを広げたい」と、梅五輪プロジェクトでは地方の魅力発信に力を入れる。眼鏡フレームや漆器の産地である福井県鯖江市と連携。学生が開発した商品を販売する。長野県飯田市の名産品として知られる水引の制作実演や販売も企画中だ。

増野さんらを指導する総合政策学部の曽根原登教授(65)は「学生が主体となってやることに意味がある」と語る。オリパラのレガシーとは、大会を触媒に社会の仕組みや価値観を変えることだ。学生にもチャレンジングな機会といえるだろう。

(山口大介)


■早大、事前キャンプで選手サポート

東京大会では各国の選手団が日本各地で事前キャンプを行う。トレーニング施設や宿泊所がそろった大学はアスリートにとって格好の練習拠点だ。受け入れをきっかけに、大学生が選手たちと国際交流を深める機会も増え始めている。


トレーニングキャンプで訪れたイタリア競歩チームをサポートする「ViVaseda」の学生たち

7月中旬。早大所沢キャンパス(埼玉県所沢市)では、韓国での水泳世界選手権を間近に控えたイタリアの競泳チームが練習を行っていた。来年の東京五輪の事前キャンプでも使用する同大の視察を兼ねた合宿。選手はプールやトレーニングルームを使用し、施設の感触を確かめた。

異国の地に加え、広大なキャンパスでの活動は不慣れなことが多い。地元住民とともにボランティアを務めたのは、同大の学生団体「ViVaseda(ビバセダ)」の学生たちだ。「プールはこちらです」「飲み物を持ってきますね」。チームが快適に過ごせるよう気を配りながら、9日間のサポートを続けた。


「ViVaseda」には約100人の学生が所属する

早大は来年7月10日~8月4日、所沢市とともに東京五輪での事前キャンプ地としてイタリアチームに所沢キャンパスの施設の一部を提供する。受け入れ予定は水泳、陸上、フェンシングの選手団約200人。施設の充実に加え、同キャンパスが東京郊外に立地していることから「競技に集中できる静かな環境が魅力に映ったのではないか」と同大オリンピック・パラリンピック事業推進室の担当者は話す。

この機会を生かし、学内で大会の機運を高めようと同室が企画し、今年4月に発足したのがViVasedaだ。現在は学生約100人が所属。来夏に向けたボランティアの準備はもちろん、イタリアにちなんだ学食メニューを開発するなど幅広い活動を行う。


団体のボランティア部門リーダーで3年の山県優奈さんは活動を通じ、「自分たちが楽しむだけではだめ。アスリートファーストで考えなければいけないと分かった」と話す。来夏の大会ボランティアにも応募したといい、「世界の人たちから『さすが日本』と思われるようなおもてなしをしたい」と目を輝かせる。

大学側は活動を通じ、学内にレガシーが育まれることを期待する。同室担当者は「大学生は観戦や大会ボランティア以外で東京五輪・パラリンピックに関われる場面がほとんどない。こうした機会を利用して国際交流に関わってもらうことで、将来的な成長につながるはず」と話している。



■キャンプ受け入れ、立教・筑波・慶応も 

 早大以外にも関東を中心に海外チームの事前合宿を受け入れる大学は各地に広がる。立教大は17年、埼玉県、新座市とともにブラジルチームのキャンプ地に決定。これまでに陸上や空手、オープンウオータースイミングの選手団がトレーニングに訪れている。

 約50人からなる同大の学生団体「オリパラ支援研究会」は選手団の来訪時にポルトガル語表記の案内図を作製したほか、飲料水の準備や会場清掃をするなどしてサポートを行った。このほか、立大側も希望した学生にボランティアの情報を提供し、国際交流の機会をつくっている。

 筑波大は茨城県、つくば市と連携し、柔道など5競技のスイス選手団の事前キャンプを受け入れる。来夏の滞在に合わせ、学内でサポートスタッフを募集予定。語学が堪能な学生を中心に約60人を集める。慶大は横浜市、川崎市とともに英国選手団を受け入れる。選手の練習サポートのほか、英国文化を紹介するイベントなどを催している



(堀部遥)

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この記事は、日本経済新聞に掲載された記事(2019年10月9日)を著作権者の許諾を得て転載したものです。

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