<東京2020>市民と絆、五輪へ駆ける 南スーダン4選手 前橋で異例長期合宿中

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<東京2020>市民と絆、五輪へ駆ける 南スーダン4選手 前橋で異例長期合宿中

東京新聞
陸上選手の小渕瑞樹さん(左)の指導の下、東京五輪を目指し練習する南スーダン選手団のモリス・ルシアさん(中)とアクーン・ジョセフさん=前橋市の王山運動場で

 東京五輪開幕まで24日であと半年。事前合宿や市民間の交流事業を誘致した全国478自治体のホストタウンでは受け入れの準備も本格化している。前橋市では紛争に苦しむ南スーダン選手団が市などの支援で昨年11月に来日し、市民との絆を深めている。 (原田遼)

 強風「赤城おろし」が吹き下ろす前橋市の王山運動場。パラリンピック選手を含めて南スーダンの陸上代表四人の練習を地元の陸上関係者やボランティアが日替わりで手伝っていた。

 練習の合間に選手たちは学校訪問や地域の餅つきなどにも参加。1500メートルのグエム・アブラハム選手(20)は「前橋の人は本当に温かい。五輪で活躍して感謝を伝えたい」と意気込む。

 母国は二〇一一年に独立したが、民族間の争いが続き推計約四十万人が死亡。今も国内外の避難民は四百万人に上る。練習はおろか満足に食べることもできない選手の状況を聞き、市は異例の長期合宿の受け入れを決定。滞在費二千万円をふるさと納税で募り、協賛企業が衣服や用具を提供する。

 400メートルのアクーン・ジョセフ選手(17)のコーチは小渕瑞樹さん(22)。何と昨年の日本選手権同種目二位の現役ランナーだ。自らも東京五輪を目指す傍ら、「社会貢献したい」と無償で指導を引き受けた。

 すると来日当初、力まかせに走るだけだったジョセフ選手はフォームが安定し、タイムが上昇。大学時代に伸び悩み、引退も考えたという小渕さんは「苦しい練習をみんな笑顔でやる。陸上の楽しさを思い出せた」。自らの代表選考は厳しい状況というが、「国立競技場でみんなと会う」という夢を諦めていない。

 唯一の女子代表、モリス・ルシア選手(18)の隣では地元高校生の平沢絵美さん(18)が走る。陸上部の平沢さんが練習を見学していた時、チームから「一緒に練習しよう」と誘われた。

 同い年のルシア選手と仲良くなり、南スーダンの歴史を調べた。「紛争でたくさんの子どもが殺されたことに胸が痛くなった。ルシアも親に会えず、寂しそう」と思いを寄せる。スマートフォンでは「ハンバーグおいしい」などたわいもないメッセージを送り合う。ルシア選手は「絵美がいてくれて心強い」と笑う。

 全国のホストタウンが受け入れる事前合宿はほとんどが七月に入ってから。南スーダン選手団の通訳ボランティアを続ける前橋市の高島泰さん(70)は「異国の文化や歴史を学べて楽しい。他の自治体でも交流を深めてほしい」と話した。

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この記事は、東京新聞TOKYO Webに掲載された記事(2020年1月24日)を著作権者の許諾を得て転載したものです。

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