パラで進化する共生社会 鉄道・ホテルの改善加速

課題への取り組み

パラで進化する共生社会 鉄道・ホテルの改善加速

日本経済新聞

東京パラリンピック開幕まで25日で半年

電車との隙間が狭くなるよう改修した駅ホーム(東京都豊島区のJR目白駅)

障害の有無にかかわらず、誰もが互いに尊敬し支え合う――。パラリンピックは、そんな「共生社会」をつくる大きな契機になる。鉄道会社やホテルはハード、ソフト両面でバリアフリー化の最後の詰めを急ぐ。ホストタウンとなった自治体の受け入れ準備も加速している。

学習院大学など学校が集まる文教地区にあるJR山手線の目白駅(東京・豊島)。JR東日本は電車の車両とホームとの隙間を縮める部材をホームに設置した。長さ3.5センチのくし状の部材をホームの先端に取り付け、乗客の転落やつまずきを防ぐ。車いすやベビーカーの利用者や視覚障害者らの安全を高める。

目白駅や大塚駅(同)など4駅に先行設置しており、五輪開幕直前の7月までに山手線や京浜東北線を中心に32駅に対象を広げる。同社は「利用状況を踏まえ、(大会後も)拡大を進める」としている。

山手線では、1月までに全車両の新型車両「E235系」への置き換えが完了した。従来の車両と比べて、座席を設置していないフリースペースが多いのが特徴だ。車いすや子連れ客の使い勝手が向上した。

誰が見てもはっきりわかる案内サインの多用もバリアフリーの一つだ。東武鉄道はエレベーターやトイレに通常より大きい案内サインを多用している。北越谷駅(埼玉県越谷市)では、トイレを示すおなじみの男女マークのピクトグラムを縦約170センチと人間の身長並みの大きさで表示している。視認性を高めて、さまざまな乗客の利用に備える。

車いすも移動しやすいバリアフリー対応の客室(東京都千代田区の帝国ホテル)

障害を持つ人の滞在先となるホテルも対応を急ぐ。帝国ホテル東京(東京・千代田)は館内や周囲でスロープや手すりの増強に取り組む。特にバリアフリー対応を強化した客室は現在1室だが、3月末までに10室に増やす計画だ。

ハードの整備に加え、接客のバリアフリー対応も重要だ。帝国ホテルは従業員向けの介助セミナーを定期開催しており、のべ約700人が参加した。体を動きにくくする器具をつけ高齢者らの気持ちを理解する研修なども実施した。「多目的トイレが何階にあるか」などをすぐ答えられるよう従業員に徹底する。

ホテルを巡っては、都内全体で車いす利用者用の客室が不足しているとの懸念が強かった。そこで東京都は2019年9月、ホテルの一般客室にも出入り口などの幅を取るなどバリアフリーに準じた対応を求める条例を施行した。

条例は「客室の出入り口幅は80センチ以上」「客室内に段は設けない」といった基準を定めており、一定の広さを持つホテルの新築、増改築は対象となる。小池百合子知事は「障害者のみならず高齢者らも含めて、より多くの方々が利用できる宿泊環境を整える」と強調する。

(亀真奈文)



先導的ホストタウン、街ごとバリアフリー

 国は共生社会の実現に積極的に取り組む自治体を「共生社会ホストタウン」として登録、公表している。現在66団体が登録され、このうちモデルとなる12の市・特別区を「先導的共生社会ホストタウン」に認定し、重点的に支援している。

 共生社会を実現する柱の一つは駅や道路、公共施設などを含む街のバリアフリー化だ。
 ユニークな事業では、「企業版ふるさと納税でトレーラーハウスを活用した車いす対応型合宿所を15棟整備」(福岡県田川市)、「馬事公苑と最寄り5駅のルート上のサイン整備や段差・視覚障害者誘導用ブロックの改修」(東京都世田谷区)などがある。
 ただ、こうしたハード面の整備以上に大切なのは、ごく自然に障害者を思いやりサポートできる「心のバリアフリー」を広めることだ。
 この分野では、特に若者の参画が目立つ。岩手県遠野市では、中高生がラジオ番組や映像を制作して住民の理解促進に取り組む。青森県三沢市はパラ選手による体験型授業を実施し、中高生を共生社会ホストタウンの広報大使に任命した。
 児童・生徒は将来、共生社会づくりの担い手の中心になるうえ、若い人の頑張りに刺激された大人の意識改革が進むことも期待できる。



この記事は、日本経済新聞に掲載された記事(2020年2月24日)を著作権者の許諾を得て転載したものです。

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