[極める]車いす 高度にフィット 走法解析+F1技術(写真:RDS)

日本の技術力

[極める]車いす 高度にフィット 走法解析+F1技術

読売新聞社

右が伊藤智也・選手    (写真:読売新聞社)

◇Tokyo2020

 車いす陸上の大ベテランで、2017年に現役復帰した伊藤智也(56)(バイエル薬品)=写真・右=は、東京パラに向けた新しい武器を自ら作り出した。自身が開発ドライバーとなり、工業デザインなどを手がける「RDS」(埼玉県)とともに完成させた車いすレーサーだ。


RDSが開発した「車いすレーサー」 (写真:RDS)

 自動車のF1「レッドブル・トロロッソ・ホンダ」のスポンサーでもある同社は、これまで培ってきたモータースポーツの技術を車いすに投入。高い剛性に加え、軽量なフルカーボン、モノコック構造の専用レーサーを完成させた。同社の杉原行里(あんり)社長(37)は「(フレームから座席まで)一体化したモノコックは、体へのフィット感が圧倒的に高い。力も入りやすく、挙動がレーサーに伝わりやすい」と話す。


 ■世界陸上「銀」
 レーサーの完成は昨年11月のパラ陸上世界選手権の数週間前。ぶっつけ本番にもかかわらず伊藤は見事に乗りこなし、400メートルの銀などで、4回目となる東京大会代表に内定した。
 開発期間は2年で、3Dスキャナーやモーションキャプチャーを使って走り方、マシンの動きなど詳細に分析。伊藤は自宅のある三重から、RDSの研究所に通った。肩やひじ、背中などの可動部にマーカーを付け、計測用のシミュレーターをこいでデータを収集。車軸に対しての座席の位置や角度などを分析し、「伊藤さんがハンドリムをたたく角度は、逆にブレーキとなっていたことも分かった。アスリートの感覚に頼っていたレーサーの最適解が見つかった」(杉原社長)。
 多発性硬化症のため下半身だけでなく上肢にも障害が残る伊藤は「レーサーの戦闘力が上がれば、あとはそれに見合う体が必要。エンジンである私がやるだけ」と、激しい練習を重ねている。杉原は「体とテクノロジーが高い次元で結合するのがパラスポーツ」との思いを改めて強くした。


 ■一般製品に応用
 杉原社長は、F1の最新技術が市販車に役立つのと同様に、「レーサーから新たなプロダクト(製品)を生み出したい」と力を込める。伊藤を計測したシミュレーターは、現在は一般の障害者が新しい車いすを製作する際のデータ採集用に活用されている。また、目を覆う形のヘッドマウントディスプレーを装着し、100年後の東京の市街地を疾走する感覚を味わえるVR(仮想現実)レーサーの共同開発にも乗り出した。伊藤は「僕が、東京パラで活躍すれば、いいPRにもなる」と話している。(敬称略)
 

◇東京社会部・小泉朋子、西部社会部・今村知寛、運動部・畔川吉

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この記事は、東京読売新聞に掲載された記事(2020年1月28日)を著作権者の許諾を得て転載したものです。

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