<北海道と五輪・パラリンピック 第1部 担う 支える>4 公平に 安全に 裏方で光る職人技

日本の技術力

<北海道と五輪・パラリンピック 第1部 担う 支える>4 公平に 安全に 裏方で光る職人技

北海道新聞社
三英北海道工場で生産されるMOTIF。吉沢今朝男工場長は「世界のお手本になってほしい」と話す(村本典之撮影)

 十勝管内足寄町の中心部から東へ3キロ。卓球台の大手メーカー三英の、木の香りに満ちた北海道工場に板がずらりと並んでいた。緑がかった深い青。東京五輪・パラリンピックで使われる「MOTIF(モティーフ)」の天板だ。

 「板は反る。どこまで抑えられるかが一番のポイント」。吉沢今朝男(けさお)工場長(51)は教えてくれた。卓球台は縦2・74メートル、横1・525メートルの板を厚さ25ミリまで9層に重ねる。天板の反りは国際基準で3ミリまで認められるが、北海道工場が生みだす台は1ミリあるか、ないかの精度だ。

■反らさない

 木材は生きている。加工してからも湿気を吸ってゆがむため、軟らかさや木目の個性を見極め、反りを抑える木の組み合わせを導き出す。供給量が安定している輸入材を使っているが、加工は足寄でなければならない。湿度が低く、熟練の職人技が継承されてきた。

 天板の塗装にも高い技術が求められる。アスリートの戦うスタイルで球の弾みに差が生じないよう回転とスピード、どちらにも公平に作用する摩擦力を計算して塗料を配合し、均一に塗る。アスリートたちに使ってもらい、感想を聞いて完成度を高めている。

 1989年に千葉県流山市の本社から生産機能を移した。足寄産の卓球台が五輪で採用されるのは、92年バルセロナ、2016年リオデジャネイロの両大会に続いて3大会目。リオでは苫小牧市出身の丹羽孝希(スヴェンソン)が男子団体で銀メダルを手にした。

 年が明け、MOTIFの製造は本格化する。東京五輪代表に決まった丹羽は再び、北海道の技の粋を集めた卓球台でメダルを狙う。

■通さない

 北海道が舞台の競技でも地元の技術と経験が力を発揮しそうだ。マラソンと競歩では、ギリシャ神話の英雄の名前にあやかる「ヘラクレス」が、沿道でにらみを利かすかもしれない。

 車両の突入を防ぐ金属製のバリケードで、底部の専用ゴムが地面と強力な摩擦を生み、時速60キロで向かってくる車両を止める。重さや大きさに頼る従来品とは異なり、止めてからの突破も許さないという。

 警備用品製造のトライ・ユーと白石ゴム製作所が道立総合研究機構工業試験場(いずれも札幌市)などと協力して昨年開発し、6月の「YOSAKOIソーラン祭り」でも採用された。

 テロ対策は現代五輪の重点課題で、東京大会では要人が宿泊する東京都内の高級ホテルがヘラクレスに関心を示している。「北海道で生まれた技術で五輪の安全を守りたい」。トライ・ユーの上杉章社長(40)は「英雄」の改良に余念がない。

 サッカー1次リーグ会場の札幌ドームは昨年10月、傷んだ芝に人工光を照らし、成長を促す「グローライト」を新たに3台導入し、使い始めた。可搬式で、電源工事などを合わせた整備費は6363万円になる。

 札幌ドームのフィールドは屋外で育てた天然芝を出し入れする。世界的に珍しいシステムでサッカーやラグビーのワールドカップ(W杯)の開催を実現させたが、芝の生育には日光が欠かせないため屋内にとどめる目安は3日間。ところが五輪は試合期間だけで8日間あり、準備も含めてフィールドを屋内から動かせない日数は見通せていない。

 「丈夫な芝を作るしかない」と札幌ドーム施設管理課の小檜山尚登課長(58)は言う。芝を踏みつぶさずに手入れするため、一般的な乗車型ではなく、手押しの芝刈り機も4台そろえた。手間のかかる綱渡りの保守作業を支えるのは、芝を見る確かな目と経験だ。(野呂有里)

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この記事は、東京オリンピック・パラリンピック延期決定前に北海道新聞に掲載された記事(2020年1月5日)を著作権者の許諾を得て転載したものです。

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